ティクセルとは

まぶたの縁には「マイボーム腺」と呼ばれる皮脂腺が並んでおり、まばたきのたびに油分(マイバム)を涙の表面に分泌しています。この油の層は、涙の蒸発を防ぎ、目のうるおいを保つうえで欠かせない役割を担っています。しかし、加齢またはコンタクトレンズの使用や長時間のパソコン作業など環境の影響で、マイボーム腺の出口に皮脂や固まったマイバムが詰まった状態をマイボーム腺機能不全(MGD)といいます。油分が十分に分泌されなくなると、涙の表面を覆う油の層が薄くなり、涙がすぐに蒸発してしまいます。その結果、目の乾きやゴロゴロ感、しみる、かすむといった不快な症状を引き起こすドライアイが生じます。MGDに伴うドライアイは年齢とともに増加していきます。
ティクセルは、熱刺激によってマイボーム腺内で固まってしまった油分をやわらげ、詰まりを取り除くことで油の流れを整え、涙の蒸発を防ぐことができます。これにより、目の乾きや異物感などのドライアイ症状の改善が期待されます。光やレーザーを使わず熱のみで安全なため、眼瞼縁に直接アプローチできるのが特徴です。イスラエルで開発され、海外では医療機器として承認されています(※日本では2025年10月現在未承認)。施術では、約400℃に加熱されたチタン合金チップをまぶたに一瞬だけ軽くタッチします。出血や火傷など皮膚を強く傷つける心配がなく熱を伝えることができますが、痛みが心配な方には不快感を軽減するために設定値をさげて行うことも可能です。その場合は効果が減弱する可能性があります。治療後は軽い赤みやヒリヒリ感が出ることがありますが、通常は数時間~1日程度でおさまります。さらにティクセルは、ドライアイ治療だけでなく、肌のハリを高めて小じわを改善したり、ニキビ・ニキビ跡・傷跡を目立ちにくくする効果があります。皮膚のコラーゲン生成を促す作用があり皮膚のターンオーバーを正常化するため、軽度の眼瞼下垂の改善したという報告もありました。
ティクセルの実際
下図のように、OSDI(Ocular Surface Disease Index:ドライアイに関連する眼症状)がティクセルを3回行ったあと、顕著に軽減したことが示されました。

参考文献:A novel option for treating dry eye disease CATARACT & REFRACTIVE SURGERY TODAY / MAY 2022 Ludger Hanneken,et al.
マイボーム腺機能不全(MGD)とは
まぶたのふちにある「マイボーム腺」は、涙の蒸発を防ぐ油分を分泌しています。この働きが低下すると「マイボーム腺機能不全(MGD)」と呼ばれ、ドライアイの主な原因になります。
MGDには主に2つのタイプがあります。腺のつまりで油が出にくくなる「排出障害型」と、分泌そのものが減ってしまう「分泌減少型」です。どちらの場合も、目の乾き・かすみ・ゴロゴロ感などの不快症状が起こりますが、日本人のほとんどは「分泌減少型」と言われています。
ドライアイとマイボーム腺機能不全(MGD)
現在、国内におけるドライアイの患者数は約2,200万人と言われています。
マイボーム腺の働きが低下すると、涙の表面を守る油分が減り、涙がすぐに蒸発してしまいます。
この状態が続くと、目の乾きやゴロゴロ感、かすみなどのドライアイ症状が現れます。
つまり、マイボーム腺機能不全は「涙の質」を悪くするタイプのドライアイの大きな原因のひとつなのです。
ドライアイの85%は、MGDと関連しているとの報告があります。
ドライアイ患者におけるMGD有病率

日本で6~96 歳の住民を対象としたpopulation based studyによると、MGDの有病率は19 歳以下 0%,20代 11.8%,30代5.6%,40代 21.6%,50代 32.8%,60代 41.9%,70代 48.4%,80代 63.9%となっております。
(出典元:マイボーム腺機能不全ガイドラインより)
国内におけるドライアイの患者数
ドライアイの患者数は推定で約2,200万人と言われるほど増加しております。特にスマートフォンやパソコンの普及が要因の一つとも言われております。
また、「順天堂大学大学院医学研究科眼科学の村上 晶 教授、猪俣 武範 准教授たちの研究グループ」の研究によると、対象者4,454名のうち53.8%(2,395名)がドライアイの症状はあるが、ドライアイの診断を受けていない未診断者と特定されました。そのほか、ドライアイ未診断者の危険因子として「若年齢、男性、膠原病・精神疾患・眼科手術・コンタクトレンズの装用がないこと」が明らかになりました。
※マイボーム腺については、ドライアイ研究会のページもご参照ください。
ティクセルとIPLの違い
ティクセルとIPL(Intense Pulsed Light)は、いずれもマイボーム腺の詰まりによって生じるドライアイに対して行われる治療法です。どちらも涙の質を改善し、目の乾きや異物感などの症状を軽減することを目的としていますが、熱を伝える仕組みや作用の深さが異なります。IPL施行後にマイバム圧出を行うのと同等な眼症状改善効果が、ティクセルを施行するだけで得られるとされており、当院ではIPL治療で効果が出なかった方にもティクセルをおすすめしています。
| ティクセル | IPL | |
|---|---|---|
| 施術効果 | 対象部位に直接熱を伝えることができ、熱伝達効率が良い | 特殊な組織に反応した光エネルギーが熱に変換され周囲の組織を温める |
| 治療の仕組み |
熱エネルギーを直接マイボーム腺に伝えて温める治療 新技術のTMA(Thermo-Mechanical Ablation)により、すべての組織に熱伝播を行えるため、デリケートな場所にも対応できる |
特定な組織に反応する光を照射し、その組織周囲に熱伝播させてマイボーム腺を周囲から温める治療 眼球に光が届かないように保護ゴーグルが必要 |
| スケジュール(1セット) | 2〜4週間おきに3回程度 | 3〜4週間おきに4回程度 |
| 1回の治療時間 | 約2〜3分 | 約10分 |
| 痛み | 軽い熱感・パチンとした刺激 (麻酔塗布可) |
ゴムで弾かれたような軽い痛み (麻酔使用不可) |
| ダウンタイム | 軽い赤み・腫れ (翌日までにおさまる場合が多い) |
軽い赤み・腫れ (翌日までにおさまる場合が多い) |
| 施術者 | 医師の指導のもと、看護師が行う | |
治療の流れ
ティクセル治療は、2〜4週間おきに3回を1セットとして行うのが基本です。症状の程度や効果の持続をみながら、医師が次回の施術間隔を調整します。
Step1ご来院・準備
治療当日は、メイクや基礎化粧品をすべて落として、来院していただきます。まぶたの状態を確認してから施術を行います。
Step2施術
上下まぶたに専用のハンドピースを軽くあて、片目あたり上下合わせて20ショット前後(両眼で約40ショット)を照射します。施術時間は2〜3分ほどと短く、軽い熱感と若干の痛みを伴う程度です。
痛みを感じやすい方には、治療設定値を下げて施術を行いますが、治療効果が減弱する可能性があります。
Step3術後の注意事項・ケア
施術後は翌日までまぶたに熱感が残ることがあります。
施術当日は、激しい運動・サウナ・水泳など、血流を促進する行為は避けてください。
また、メイクは当日は控え、24時間後から再開できます。洗顔は当日の夜と翌朝のみ、ぬるま湯で優しくすすぐ程度にとどめましょう。石けんやクレンジングで強くこするのは避けてください。その後は、乾燥を防ぐために化粧水や保湿クリームでケアしてください。外出時は紫外線対策(帽子・日焼け止めなど)を行いましょう。また、蒸しタオルやホットアイマスクによる温めは3日間お休みいただき、4日目以降から再開できます。
Step4治療後の経過
刺激を与えると赤みや腫れが強く出ることがあるため、触れたりこすったりしないようにしましょう。
治療後に赤みやむくみが残る場合がありますが、通常は翌日には落ち着き、普段通りの生活に戻ることができます(※個人差があります)。
目を温めた後に眼瞼清拭をすることにより治療効果がさらに高まり、推奨しています。
(※眼瞼清拭とは、目にしみないアイシャンプーを使って、指の腹で眼のふちをマッサージしながら洗ったりすることです。)
治療が受けられない方
以下のような方は、ティクセル治療をお受けいただけない場合があります。安全のため、治療前に必ず医師が状態を確認し、実施の可否を判断します。
- 妊娠中または授乳中の方
- 施術部位に腫れ・感染・炎症・腫瘍などがある方
- 強い日焼けをしている方、または直近で日焼けをした方
- ケロイド体質の方、血液が固まりにくい方、傷の治りが遅い方
- 眼類天疱瘡(がんるいてんぽうそう)や眼球癒着など、まぶたや結膜に瘢痕性の疾患がある方
- 現在、目に炎症性の疾患があり、医師が施術を控えたほうがよいと判断した方
- ドライアイの種類や重症度によって、他の治療を優先したほうが良いと医師が判断した方
よくある質問
治療時間はどのくらいですか?
ティクセルの施術自体はおよそ2〜3分ほどで完了します。来院からお帰りまでを含めても短時間で終わるため、忙しい方でも受けやすい治療です。
治療は痛いですか?
輪ゴムで軽くはじかれるような軽い刺激があります。(感じ方には個人差があります)
痛みに敏感な方には、医師の判断で設定値を下げて施術することがあります。まぶたに麻酔クリームを塗布しても麻酔が効くまで30分以上かかることがあるうえ、治療効果が減弱する可能性があるためお勧めしていません。施術後日焼けしたような軽いヒリヒリ感を感じることがありますが、数時間で自然におさまります。
治療後に生活制限はありますか?
治療の24時間後以降は、特に生活の制限はありません。ただし、治療部位に小さなかさぶたが残ることがありますので、無理に剥がさず自然に取れるのを待ちましょう。かゆみを感じる場合は、保湿クリームを軽く塗布して肌を保護してください。
治療後に気を付けることはありますか?
施術当日は、水泳・サウナ・激しい運動は控えてください。また、当日の夜と翌朝の洗顔は、石けんやクレンジングを使わず、ぬるま湯でやさしくすすぐ程度にとどめましょう。外出時は、日焼け止めクリームや帽子で紫外線対策を行うことをおすすめします。
治療のあと、まぶたが赤くなりました。大丈夫ですか?
ティクセルは、まぶたに熱エネルギーを加える治療のため、治療直後に軽い赤みが出ることがあります。これは一時的な反応であり、通常は数時間から1日程度で自然に落ち着きます。冷却や保湿を行うことで早く改善する場合もあります。
安全性は高い治療ですか?
ティクセルは、安全性を重視して設計された医療機器です。
以下の点から、皮膚や眼に過度な負担をかけずに治療が行えます。
- チップの先端は尖っていないため、皮膚を傷つけたり出血を起こしたりすることがありません。
- 光やレーザー、ラジオ波を使用せず、熱機械的エネルギーのみを利用するため低エネルギーで安全です。
- 放射線を照射する治療ではありません。
- チップがまぶたに触れる際の圧力はごくわずかで、眼球に影響を与える心配はありません。
- すでに米国FDA、EU、オーストラリア、ブラジル、南アフリカ、韓国、台湾、タイ、イスラエルなど多くの国で医療機器として承認されています。
(※日本では2025年10月現在未承認)
治療費用
ティクセルの治療は自由診療となります。
| 回数 | 金額(税込) |
|---|---|
| 1回のみ | 5,000円 |
| 3回セット | 14,000円 |
| 4回目以降 | 5,000円 |
価格は予告なく変更になることがあります










